花ハウスだより

誇れるものはまだ何もない自分~「すべてに対応できるケアワーカー」になりたい【花ハウスの人々15】【花ハウス20周年】

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 どうしました~♪♪ 弾むような明るい声音がフロアに響きわたります。よみうりランド花ハウス5階の介護職、Sさん(23)は陽気な性格。音楽系の専門学校を卒業し、2021年に入職した若手職員です。

正解は一つじゃない、いろんな介護があっていい

 中学、高校では吹奏楽部に所属し、アルトサックスとテナーサックスの担当でした。専門学校では、大好きな楽器を仕事にしたいと、楽器の修理を学びました。ただ、精密機械を扱うような細かい作業で、高価な楽器だから失敗は許されません。プレッシャーもあり、仕事にするのは無理と思ったとき、姉の影響で介護に目が向きました。介護職で働いていた姉は「実験台になって」と言って、Sさんを抱きかかえたり、爪を切ったりしました。そんなとき、教えてくれたのが仕事のやりがいでした。例えば入浴が苦手な利用者様を、お風呂に入れるときのこと。

 「きれい好きの利用者様だったから、『汚れたところを洗濯しに行きましょうね』と言ったら一緒に行ってくれたの。私なら入ってくれるけど、他の人じゃダメなの」

 自慢げに話すのを聞き、介護という仕事を身近に感じたといいます。へー、そんなやり方もあるんだ、と。

 当時も今も感じるのは介護の正解は一つでなく、いろんな方法があるということです。

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今ならどんなことができるかな

 忘れられない利用者様がいます。入職したばかりのときに出会った女性で、認知症が進み、職員に噛みついたり、髪を引っ張ったりすることがありました。どう対処していいかわからず、指導役の先輩の対応を見ているだけでした。身体が弱っていくのに、自分の感情を言葉にできない。そんな利用者様にかける言葉が出てきませんでした。この女性のことを今も思い出し、「もうちょっと関われなかったのか。今だったら、どんなことができるだろう」と考えてしまいます。

 入職した翌年、何かあったときの対応を学ぼうと、事故報告書を読み込みました。報告書は、介護サービス中の事故を記録したもので、事故当時の状況や原因、対策が書かれています。「先輩職員がどう対応したのか過去にさかのぼって知ることができました」

 転倒、誤飲や異食、薬を床に落としてしまう落薬、介助時のケガなどの事故。防ぎようもないものもありますが、焦り、判断ミス、原因は職員の心の中にもあります。自分だったらどうしただろうか、もっと他の対策はないのかを考えたといいます。

 先輩職員を見ていると、利用者様の状況によって、部屋の動線を変えたり、食事や飲み物の提供を工夫したり、声のかけ方でもひとつひとつの言葉を丁寧に選びます。引き出しの多さやコミュニケーションの取り方には、自分にはない、見習うべきところがたくさんあります。

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 この春、念願の介護福祉士の資格をとりました。ある先輩職員は「若いのに気配りができる」と評価しています。でも、本人は焦りを感じているそうです。

 まだ自分に誇れるものはなにもない、何者にもなれていないのではないか――。経験年数を重ねても、何もできないままだったらどうしよう。時折、不安がこみ上げます。「いろんな状況に対応できる技術や引き出しが自分は少ない。もっと視野を広く持ち、すべてのことに対応できるようになりたい」。目指しているのは、「Sさんがいれば安心だね」と言われるような安定感のある介護職になることだそうです。(剛)

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 職員に考えてもらった「よみうりランド花ハウス」のシンボルマーク。今回紹介するのは、前回に続いて4階のHさんとTさんの作品(その二)です。<シンボルマーク案2>になります。

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