花ハウスだより

「業務より人を知る」「介護は作業ではない」【花ハウスの人々1】

 これから特別養護老人ホーム「よみうりランド花ハウス」で働き、暮らす人を紹介する企画「花ハウスの人々」を始めます。どんなことを感じ、考えているのか、インタビューしていきます。1回目は、介護職(ケアワーカー)として今年春に社会人のスタートを切った癒し系の新人Mさん(22)と、同じ5階フロアで指導役を務める爽やか系の先輩職員Hさん(37)です。

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癒し系のMさん(左)と、爽やか系のHさん

カルチャーショックから学ぶ

★PA210774.jpg 大学でマーケティングを学んだMさん。介護職を選んだのは、人と話すことに苦手意識がなく、高齢者の方とコミュニケーションを取れるだろうと考えたからだそうです。でも、入職して間もなく、思うようにご入居者様と会話できないという壁に直面しました。

 お年寄りと接するときのイメージは傾聴でした。時間をかけて、相手の話にゆっくりと耳を傾ける。そうすれば、どんな人の表情も和らぐはずと、考えていたそうです。

 けれども、あるご入居者様と接していた時のことです。ゆっくり話を聞いていると、相手の表情が険しくなってきました。「どうしたんだろうか」と思いながら続けていると、見かねた指導役のHさんが「これ以上は話さない方がいいかも」と声をかけてきました。そのあと、長く話すことを好まれない方だと知りました。隣に長くいるだけで、相手を安心させるとはかぎらない。それぞれに好む距離がある。そう気づかされました。

 また、認知症の方は例えば、食事の時に「ご飯おいしいですか?」と聞くと、「今日はお風呂?」と全く違うことについて答えるような、独特の反応を示されることがあります。Mさんにはカルチャーショックでしたが、こうした経験を通じて、介護の専門職として技術を身につけなければと実感したそうです。

引き出しを多く持つ

 花ハウスの介護職員が休憩するスタッフルームには、ケア部の指針が貼られています。「相手の気持ちを知り、何を必要としているかを探り、実践する」。そして、介護は作業ではなく、専門家が根拠に基づいて行うケアだとしています。ご入居者様は、性格や症状も異なり、日ごとに状況も変わるため、適切なかかわり方は常に違います。

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 それぞれの人を知ることで、はじめて行動を予測することが可能になります。「最終的には業務よりご利用者様を知ることです」とHさんは考えます。

 いいと思った先輩の技術を学んだらどうか。月に一度の面談で、あるときHさんはMさんに助言しました。そこでMさんがまねたのは、主任を務める先輩職員の声掛けでした。忙しい時間帯になると、職員の語気も強くなりがちですが、主任は、どんなに忙しくても、声のトーンやテンポは安定しています。介助をするときにも、「今からこうするからねえ」と、一つひとつの動作で声掛けを怠りません。そうした点を見習うようになりました。

 花ハウスでは、ご入所者十人からなるユニットごとに職員が配置されます。Mさんは最近、4月から担当してきたユニットとは異なる、新しいユニットを担当するようになりました。これまでは身体的な介護を必要とする方が中心でしたが、新しいユニットは認知症があって不安を抱えたり、何度も同じ要求を重ねたりされる方が多いそうです。そこでは、利用者の状況に合わせて臨機応変に対応していく技術が求められます。Hさんのように、ご入居者様の険しい表情を見て、「そろそろ声掛けをしないと、不安から『帰りたい』と立ち上がってしまう」と判断し、さりげなく声を掛ける。そんな積極的なかかわりがMさんにはこれまで以上に求められています。

 いつも温和でニコニコ、人に安心感を与えるキャラクターのMさん。最近はコンビニでいろんなカップ麺を買ってお昼時に試すのが楽しみ。Hさんは「失敗を通じて自分なりの方法を考えていってほしい。いろんな場面で、対処する選択肢の入った引き出しを増やしていってほしい」とMさんに期待を寄せます。このため細かく指示せず、自分なりのカラー、介護の方法を身につけてほしいと、成長を見守っています。

笑っていただく事は大事 

★PA210781.jpg 山形で高校時代までサッカー部に所属していたHさんは、東京の介護専門学校で学び、地元・山形の施設で介護の仕事に就きました。隣近所のお年寄りに可愛がられていたことが理由で、「介護の仕事は将来需要があるだろう」という親の助言もありました。

 専門学校時代の知人に誘われて花ハウスにやってきたのは7年前のことです。地元の施設は、一部屋に複数の入居者が暮らす多床室のタイプでした。スケジュールや手順に疑問を投げかけることは許されない雰囲気でした。時間通りに入浴や排せつ、食事介助を一斉に進めることが求められ、流れ作業のように感じることもあったそうです。

 一方、花ハウスは全室個室で、少し雰囲気が違いました。驚いたのは施設内で起きた事故防止策を検討する会議でした。ご入所者様が転倒した事故について、その事故原因だけでなく、個々のリスクを分析し、将来起きうる事故について、みんなが自由に意見を出し合っていました。スケジュールや手順を絶対視することなく、「ここは変えたほうがいい」と検討していたそうです。そうすることで、例えば認知症で不安定な状態の日にお風呂に入れて事故につながるぐらいなら、代わりに別な方と交代して予定を変えるような、現場での臨機応変な対応が生まれるといいます。

 Hさんは人との間合いの取り方が絶妙です。フロアでも、複数のご利用者様に目配りしながら、気になる方にはさりげなく声掛けします。そして、人を笑わせるのが好き。どんなに忙しくても、訳のわからないことをしてみせ、笑いをとろうとします。例えば、お風呂介助の際に、ご利用者様にはいてもらうとみせかけて、まず自分でパンツをはこうとしてみる。関西出身の方なら、そこで「なんでやねん!」と喜びます。ダジャレも言いますが、それは単なるサービス精神からではないのです。「一回笑ってもらうだけで全然違う。不安になりそうな心を穏やかにする効果があるんです」。施設内をひょうひょうと歩くHさんですが、介護について深く考えているのです。

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施設の焼き芋イベントでのMさん(左)とHさん

※花ハウスでは、ともに働く仲間を募集しています。詳しくはこちらから。


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