花ハウスだより

ギュッと抱きしめたくなる笑顔に会えた~幸せをいただく仕事【花ハウスの人々18】【花ハウス20周年】

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 4階の介護職員、Oさん(62)は40歳代後半で介護の世界に入りました。最初は1日3時間週3日の入浴介助から。お風呂が嫌いな利用者様にどう接していいかわかりません。「絶対イヤ!」という利用者様に、Oさんは「ごめんねー」と謝りながら入ってもらっています。入浴後、「あー幸せ、ありがとね~」と人が変わったようになる方がいらっしゃいました。

 出身は佐賀県。短大の音楽科を卒業し、ピアノの先生をしていました。結婚を機に神奈川県に引っ越し。あるとき音楽療法に興味を持ったのをきっかけに、介護の勉強をしてみようと新聞のチラシで見つけたホームヘルパー2級(現在の初任者研修)の講座を受けました。外で働いてみたいと思い、花ハウスのパート職員になったのは、それから10年近く経ってからです。

 利用者様に入浴してもらうのは、清潔な状態を保ち、身体や皮膚の状態を確認する目的があります。皮膚の疾患や内出血の有無を確認するよう気を配りました。今考えると、入浴のお手伝いを通して、利用者様とのコミュニケーションの取り方や衣服の着脱、オムツのあて方といった介護の基本を身につけることができたことが、その後に役だったそうです。

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何かしてあげるだけが介護じゃない

 子育てが落ち着いてくると、お風呂の場面だけでなく、利用者様の普段の様子も知りたいと、勤務時間や日数を増やしていきます。食事介助などを通して、これまで知らなかった利用者様の表情に幾度となく出会ったそうです。Oさんは、「お話しながら食事介助していると、『ウフフ』と素敵な笑顔になられたりして、ギュッと抱きしめたくなります。介護ってこっちが何かしてあげることもあるけれど、こちらが幸せをいただくこともあるんだなって」と言います。

 花ハウスに入職して今年で15年目。6年前には介護福祉士の資格も取りました。周りのスタッフに励まされ、教えてもらったから続けられたと、Oさんは振り返ります。介護の仕事には、洗い物やお掃除など、主婦的な部分があることも、違和感なく溶け込めた理由です。

 得意な音楽をいかし、レクリエーションではキーボードを演奏したり、利用者様と歌を歌ったりもします。「ふだんお話が難しい方でも、昔の童謡を聞くと、表情が変化したり、身体が動いたりするんです。みなさん昔の歌がお好きなんですね」

のんびり老いていきたい

 Oさんは、肉親を介護した経験はありません。介護の仕事を通して、人はこうやって年をとっていくんだと初めて知りました。穏やかだったり、怒りっぽかったり、夕方になるとご自宅に帰りたがったり。利用者様ごとに、様子は違います

 担当は認知症の方が多いフロアです。落ち着かない様子の方がいれば、できる限り話を聞き、受け入れ、なるべく話を合わせて寄り添います。 

 「自宅に帰りたい」と言い出す利用者様には、「みんなここに泊まるんだよ。そんなこと言ったら、みんな寂しがるよ」と声をかけます。そんなとき、「この方はどんな人生を歩まれてきたんだろう」と考えます。「自分はあまり深く考えずに人生を送ってきたので、ほわーん、ほわーん、とのんびり老いていきたいかな」

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老いに向かう心に余裕が生まれた

 介護は、いろんな方々の『人生の最終章』に立ち会う尊い仕事だと、Oさんは言います。自分自身も老いを意識する年代ですが、生老病死の現場に立ち会ってきたことで、老いに向かう心にちょっぴり余裕が生まれたといいます。「いろんな方を見させてもらったので、老いや病気で、こういうときにはどうしたらいいか、ということがある程度わかるようになりました。人生が広がりました」。これから社会全体が高齢化していきますが、介護のことを知っているから、「何とかなるさ」と思えるようになりました。

 医療や福祉の進歩によって、現代社会や都市の日常では、老いや病、死が見えにくくなっていると言われます。そうした現実に介護での仕事を通して触れられた、というOさんは最後に「介護に関心のある女性の方にはおススメの仕事です」と言いました。いろんな人生や生き方、老い方を間近に見たことが、自分自身の財産になっているようです。(剛)

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 来年3月に20周年を迎える「よみうりランド花ハウス」のシンボルマーク案の4作目を紹介します。3階の若手職員のアイデアを、4階の職員さんが娘さんにも手伝ってもらいながら、仕上げてくれました。花束の形がとても斬新です。


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