オリーブクレージュのケアワーカー、新しい自分に出会う喜び【花ハウスの人々29】

今年春に施設近くの高校を卒業し、よみうりランド花ハウスで介護職として働くHさん(18)の髪色は、オリーブ色とグレイ、ベージュが混じったオリーブグレージュです。ぱっと見、落ち着いたヘアカラーですが、よく見ると角度によって色合いが微妙に違います。
奨学金を借りてまで大学でやりたいことはないからと、高校卒業後に就職を選んだHさん。社会人になって給料をもらうようになって、念願だった髪を染めることにしました。最初はビビッドオレンジ、次はブロンド、そしてオリーブクレージュと、次々に髪の色を変えています。びっくりするぐらい髪の色で印象が変わります。「あら髪を染めたのね、あなた」。ご利用者さんとの会話も弾みます。

「鏡を見るたび新しい自分に会えるのがうれしい」。そう話すHさんは給料でトレーニング用具を買い、身体も鍛えています。メイクに関心もあるイマドキ男子です。
花ハウスは、清潔感や不快感を与えなければ、髪の色や髪型にルールは設けていません。勤務中は制服なので、髪型や髪色は自己を表現する大事なポイントです。つい先ほども、毛先を染めたウルフカットの女性職員に会いました。
黒髪だったころのHさん
Hさんは、高校時代にラーメン屋さんでアルバイトをしていて、卒業後も人と接する仕事に就きたいと考えたそうです。おばあちゃんが大好きだったことから、お年寄りと接する仕事が自分には向いているはずと、ひらめきました。
その直感は正しかったようです。入職から8か月がたち、周囲の期待通りに成長し、夜勤もこなしています。「飲食店の仕事と違い、一人一人の方と長くかかわり、仲を深めていくことができます」と介護の魅力を語ります。

指導役のY先輩(右)と並んだHさん
就職してHさんが戸惑ったのは、言葉遣いや礼儀です。アルバイト先のラーメン屋さんでは、おちゃらけた性格そのままに「ウィース!」と年上の同僚にも挨拶していましたが、施設ではそうはいきません。年長者には礼儀正しく接するのが常識です。
指導役のY先輩から、朝来たら必ず同じフロアの反対側の職員にもあいさつすることや、身体を深く折り曲げてお辞儀するよう指導を受けました。「社会人は切り替えが大事。利用者様やご家族に接するときには、ふざけた自分の素(す)は隠せ」という言葉をもらったこともあります。
担当するのは認知症の利用者様が多いフロア。接し方にも様々な工夫が必要になります。正面から答えるよりも、真実を伝えるよりも、話をそらす、あえてウソを言わなければならない、そんな場面もあります。
安全に、そして心の平穏を保ってもらうには、どんな対応がいいのか。考える続けるのがプロの介護職です。でも、Hさんを見ていると、あまりかしこまらず、のびのびと働いてほしいと感じます。(剛)

