花ハウスだより

「気持ち受け止めることが大切」未経験で就いた介護の仕事【花ハウスの人々3】

 今年7月、よみうりランド花ハウスで3人が介護職としてのスタートを切りました。3人とも他の業界から介護の仕事に飛び込んだ未経験者。何に戸惑い、何に悩んだのでしょうか。約5か月間を振り返ってもらいました。

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早番勤務を終えたあと、話をきかせてくれたUさん(右)とHさん

「人のために何か」「安定した仕事に」

 話を聞いたのは、販売職だったUさん(40)、型枠大工だったHさん(29)、飲食業にいたSさん(24)の3人です。まずは、介護業界に入ったきっかけからです。

 Uさん「家電量販店で携帯電話やパソコンを売っていましたが、インターネットで簡単に買えるようになり、将来に不安を覚えました。これから世の中で必要とされてくる仕事がいいのではと思いました」

 Hさん「もともと力仕事が好き。建設現場でコンクリートを流し込む型枠をつくる大工の仕事を10年近くしたあと、人手不足の介護業界で働くことにしました。人のために何かしたいと思ってきたから、介護にも前から関心がありました」

 Sさん「飲食業界にいましたが、新型コロナウイルスで店があけられなくなり、フリーターになりました。不規則な勤務で身体を壊しそうになり、安定した仕事に就きたいと思いました。介護を選んだのは、母の勧めが大きかったです」

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母の勧めで介護の仕事を選んだというSさん

「体の使い方反復し習得」「研修と現場違う」

 3人は花ハウスに入る前、介護職の基本的な知識を学ぶ初任者研修を受けていますが、未経験からのスタートでした。最初に戸惑ったのは体の使い方。ご利用者様にも介護職に負担の少ない動き方が必要だからです。

 Uさん「最初はご入所者様が立ち上がるときに、どうやって手を差し出したらいいかわかりませんでしたが、反復するうちにご入所者様の負担の少ない動きが自然とできるようになりました。難しかったのはベッドと車椅子の間を移動していただく移乗。自分の腰を痛めないようにと膝を折りますが、曲げ方が中途半端なのか足に負担がかかります」

 Hさん「細かく教えてもらったので戸惑いはありませんでしたが、研修と現場は違うので、先輩の動きを観察しまくりました。両手が使える方をトイレに連れて行く際は、自分でズボンをおろしてもらった方がスムーズにいくと最近気づきました」

 Sさん「ご利用者様の体にふれるときに、骨折したり、内出血したりしたら大変です。どのくらい力を入れたらいいのかという力加減がなかなかつかめず不安でした。今も完璧にできているか、自信はないですが」

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移乗の動きを話し合うHさん(右)とUさん

「正解がいくつもある世界」「1日3回は『なるほど』」

 その一方で、新たな気づきもあり、「なるほど」と思うことも多いそうです。

 Uさん「ベッドのご入所者様の体勢を保持するため、身体の下に枕やクッションをいれるんですが、その位置がご入所者様によって違うんです。その理由を説明してもらったとき、介護は正解がいくつもある世界なんだなあと思いました」

 Hさん「『この方はどうしたいのか』とじっくり見ているうちに、いろんなことがわかってきます。自分のことを知るのも大事ですが、相手のことを把握しないといけません。自分の考えを通しちゃだめなんだ、と気づきました」

 Sさん「1日に3回は『なるほど』ってひとりごとを言っています(笑)。最初、ベッドから立ち上がってもらうとき、両脇に手を差し入れて持ち上げようとしていたら、先輩に『腰を痛めるよ』と言われました。ベッドから、前かがみの姿勢で腰を浮かせてもらい、少し引くと、ふわ~っと立ってくれました。感動でした」

「母に感謝された」「笑顔に幸せ」

 介護の仕事についてよかったと感じる時、やりがいを感じるのはどんなときですか。

 Uさん「トイレに行けない方をサポートし、すっきりとした顔を見たとき、転職してよかったな......と。家では認知症の祖母と母の間で『言った』『言わない』と喧嘩もありましたが、自分が介護の勉強をして、認知症の方の言うことは否定してはいけないんだと母に伝えました。介護のあるべき姿を示してくれるのは助かると、母からは感謝されました」

 Hさん「小さな声で『ありがとう』と言ってもらい、話せなくても、うれしそうなそぶりを見せて下さる方がいらっしゃるんです。自分、笑顔を見るのが好きなので、幸せな気分になります。小さなことでも人に楽しさを与えられたら、働き甲斐になります」

 Sさん「正直なところ、僕が利用者さんの年齢になったらできれば介護されたくないと思いました。介護されたいと思っていた人はいないはずです。でも体が動かなくなれば、介助してもらわないといけない。複雑な思いだし、不機嫌になることもあるでしょう。皆さんに満足してもらうためには、どうしたらいいのかを考えていきたいです」

「やってみて正解。天職です」「視野広がった」

 最後に、これから介護職に就こうかと考えている人にメッセージをお願いします。

 Uさん「介護は特別な仕事と強調されがちですが、実際にやってみると意外に普通のサービス業でした。この職場だからかもしれませんが、特別辛いこともない。構えず選んでいただいていい。だれかに必要とされたいと考えている人にはお勧めです」

 Hさん「迷っている人がいたらやってみたらいい。僕はやってみて正解でした。介護は天職です。いろんな方がいますが、気持ちを受け止めたい。5分おきにトイレ行きたいとおっしゃる方がいます。その人はトイレに行きたくて困っています。『5分前に行きましたよ』と丁寧に説明しながら、応えてあげたいです」

 Sさん「もともと几帳面な性格じゃないんですが、薬の服用などでミスがあったら大変なので、仕事中は注意深く確認するようになりました。視野が広くなり、いろんなところに目配りできるようにもなりました。排泄の介助も、最初は不安だったんですが、すぐに慣れました。仕事は慣れだと思います。介護業界は『腰を壊す』とか『辛い』とみられがちですが、何をしようか悩んでいる人がいたら、『じゃあ介護やってみたら』と声を掛けたいです」

★6>DSC_0204.JPG今年7月、入職して橋本施設長から辞令を受け取ったときのSさん


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