花ハウスだより

トリマーと介護がつながった日!【花ハウスの人々4】

 介護職として働き始めて8年になるTさん(34)の前職は、ペットの犬や猫の毛を整えるトリマーです。ふたつの仕事に一見つながりはなさそうですが、トリマーとしての経験がいきているといいます。

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ご入所者様に抱かれるチワワのみかんちゃん

ニコニコしてカワイイおばあちゃん

 転職のきっかけは、介護職に就いている幼なじみとの飲み会でした。「おばあちゃんがニコニコしていて、かわいいんだよ~」。酎ハイを飲みながら話す友達の笑顔を眺めながら、「介護は、やさしさや温かみがある仕事なのかも」と心が動きました。 

 トリマーの仕事も好きでしたが、身体が小さく、大型犬を扱うのは体力的に負担が重く、年をとっても続けていけるか不安がありました。母が訪問介護の仕事を長く続けている影響も大きかったです。昔から人の笑顔を見るのが好きでした。もっと人と関わる仕事に就きたいという思いもあり、幼なじみが働いている特別養護老人ホーム「よみうりランド花ハウス」を見学することにしました。

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ご入所者様に話しかけるTさん

「こんな感じですか~?」と遠慮なく聞ける職場

 施設に行くと、自分が介護に持っていたイメージと違う世界がありました。重労働の介助をひたすら繰り返す、きつい職場を思い描いていたといいますが、職員がにこやかな表情を浮かべ、いきいきと働いていました。

 Tさんが転職したのは翌月のことです。身体が小さい自分が、自分より大きなご入所者様を抱えたりできるのかな。最初は不安でした。でも、いろんなコツがあると教わります。例えば、ベッドの上のご利用者様に移動してもらうには、ベッドと体の接地面を小さくするといい。思うように動かせないことがあると、先輩をつかまえて、「こんな感じですか~?」と遠慮なく聞きました。同じフロアで体の一番大きい先輩に、「実験台になってください」とお願いしたことも。「あの先輩を動かせれば、だれだって動かせるなあって思ったんです」

 犬や猫を扱うトリマーも、人の介護も、相手の気持ちを考える点では共通している、とTさんは実感しています。介護職に就くにあたって受講した初任者研修のときの先生は、大型犬の介護の参考になりそうだと、人の介護を勉強したことが、介護の世界に入るきっかけになったと話していました。介護の技術に、人と大型犬で共通するところがあるなら、「自分の経験を生かせる部分があるのかなあ」と感じたそうです。

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Tさんの働くフロアを飾るペットの写真

人を和ませる動物とのふれあい

 トリマー時代から猫や犬の耳かき、爪切りは得意だったので、施設に来てからも積極的にご入所者様の耳かきや爪切りを引き受けてきました。ご入所者様からは好評で、Tさんがフロアを歩くと、「次よろしく~」「今度いつ来られるの~」と声がかかるそうです。

 あるとき、犬を飼っていたご入所者様と話をしていて思いついたのが、ペットと触れ合っていただく「アニマルセラピー」。前に勤めていたペットショップから、3匹の小型犬をレンタルし、施設に連れてきました。そのうちの一匹は、自分が子犬のころにお世話をしていたトイプードルです。ご入所者様に少人数ずつベランダに出ていただき、日なたで犬を膝に乗せていただきました。

 「人とは違うフワフワしたぬくもりを感じるのでしょうか。皆さんとても優しい表情で、喜んでいただきました」

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ご入所者様の膝の上で目を細めるチワワのみどりちゃん。最初の写真のみかんちゃんのお母さんです

ご入所者様の好きなことを引き出す

 Tさんが常に心がけているのは、ご入所者様の好きなことを引き出して、ケアにつなげることです。例えば、裁縫が好きなご入所者様がいらっしゃいました。昔、着物をつくるお仕事をされていたようです。フェルトを使って飾り物を作ってくださいとお願いすると、喜んで引き受けてくれました。そのうち、ほつれたり破けたりした衣類の繕いものが、この女性の日課のようになります。同じフロアで修理する衣類がなくなると、Tさんは上司を通じて他のフロアからも衣類を集めました。Tさんがそれを持って「ほらまた、今日も仕事来たよー!」と女性に渡すと、素敵な微笑みがこぼれました。この方はその後、お亡くなりになられましたが、制作していただいたフェルトのタペストリーは今もみんなの心を和ませています。

 Tさんはインタビューの最後、「自分は誰かの笑顔を見るのが好きなんだなあと、改めて思います。これからも、ご利用者様の好きなことを引き出して、笑顔になってもらいたいですね」と話してくれました。(剛)

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裁縫好きのご入所者様がつくったタペストリーの前で


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