花ハウスだより

ケーキ屋さんになりたかった私~目指せ「みんなのお母さん」【花ハウスの人々11】

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 「よみうりランド花ハウス」の管理栄養士、Tさん(44)は食べることが大好き。子どもの頃から「おいしい」を大切に生きてきました。

 Tさんの姿は、施設のあちこちで目撃します。

 「きょうのお食事どうでしたか」「ちょっとかたかったよ」

 「食べたいものありますか」「夏だから、そうめん食べたいわね」

 入所の女性と談笑しているかと思ったら、食欲や体重が落ちている入所者様への対応を看護師さんやリハビリ担当の職員と話し合っています。

 高齢者施設には、食事をあまり食べられない方がいらっしゃいます。どんな表情で召し上がられているか、おいしいと感じていただけているか。事務所で記録を読むだけではわからない情報を、施設内を歩き回って集めます。入所者の食事は給食会社が調理していますが、その献立や実際の食事をチェックするのも大事な仕事です。

 「みんなが元気になれるように、縁の下で頑張るのが管理栄養士という存在。理想のイメージは、『みんなのお母さん』です」とTさんは言います。

 口に入れた食べ物を飲み込むには、噛んでバラバラになった食べ物を「食塊(しょっかい)」という塊(かたまり)にし、舌で喉へと運ぶ必要があります。噛めない方には細かく砕いた刻み食を提供し、塊をつくるためのトロミを混ぜます。

 体重の減少が続いている方には、食事を半分に減らして栄養補助食品を食べてもらうよう提案することもあります。「食欲が落ちている入所者様は、量が多いと見ただけで、お腹いっぱいに感じてしまうんです」

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食べすぎる人、食べない人

 母親があまり洋食をつくらなかったので、小学生のころ、グラタンやサンドイッチは自分でつくっていました。お菓子作りも好きで、バターをマーガリンに変えたらどうなるか、砂糖を使わないとどうなるか、材料を変えていろいろ試していました。夢はケーキ屋さん。それが栄養士に変わったのは、高校時代です。

 宮崎市内の進学校に通っていました。当時は就職氷河期で、就職を見据えれば、パティシエになるための専門学校に行くよりも、国家資格を目指せる四年生の大学に行ったほうがいい。看護師か管理栄養士という選択肢から、迷った末に栄養士の道を選びました。

 もともと食べることは大好きでしたが、知的障碍のある方が暮らす施設で働いていたときは驚きました。食堂の壁に献立表を貼っておくと、いつまでも眺めています。廊下を歩くと、早く献立表が見せてとついてきます。人が食べ残したものまで食べてしまうほど、食べすぎてしまう人がいました。食いしん坊の自分も顔負けなほど、食べるのが好きな人を見ていると、やりがいを感じました。

 花ハウスで働き始めたのは、老人介護施設での栄養管理に関心を持ったから。それまでと違い、食べない人にいかに食べてもらうかを考えることが増えました。

 好評なメニューは冷やし中華や、白身魚を揚げたもの。それ以外にも好きな食べ物をあげる人はたくさんいますが、予算の制約もあって全員の希望はなかなか叶えられません。「なるべく多くの人に好きなものを召し上がってもらうのもやりがい」とTさんは言います。

 趣味は株式投資。食べ歩きをして、いいなと思った飲食店を運営する会社に投資します。料理だけでなく、店の内装や宣伝、客層も見て、人気の秘密を考える。「おいしいな!」と感じた会社の株を買って、損をしたことはないと、Tさんは教えてくれました。仕事にも趣味にも、「おいしさ」は欠かせません。(剛)


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